横浜トリエンナーレ2008「イエノイエ・プロジェクト」 五十嵐太郎

今回、横浜トリエンナーレのインフォメーション・センターとして建設される「イエノイエ」は、気鋭の若手建築家として注目される平田晃久さんの設計によるものです。彼は、世界的に活躍する伊東豊雄建築事務所を独立し、街並みのような風景をもつ商業施設、代官山のsarugaku(2006)や、ユニークな屋外階段が巻きつく、R-MINAMIAOYAMA(2006)などを手がけました。「イエノイエ」のテーマは、家型です。住宅の姿を想像したときに、誰もが思い浮かべる、もっとも普遍的なかたちとしての三角屋根。そこで平田さんは、はるか彼方の昔から使われている家型に対し、新しい解釈を導入して、現代的な可能性を提案しました。

「イエノイエ」では、家型の連なりを山脈に見立て、複数の小さな屋根に分解することで、内部の空間構成にも大きく関与します。おそらく、室内にいながら、初めて屋根に出会ったというべき、新しい住まいの経験を与えてくれるでしょう。横浜トリエンナーレでは、実際に空間の「いごごち、うちそと、よりどころ」の感覚を身体で味わうことのできる展示として、1/1のモデル・パビリオンを建設します。これは次世代を担う建築家の設計した住宅を体験できる希有なチャンスとなるでしょう。

「イエノイエ」の内部では、二階の各部屋において、建築家の吉村靖孝,藤本壮介,槻橋修によるやはり家型をコンセプトとした住宅のアイデアを展示します。ほかにも一階では、石黒由紀五十嵐太郎研究室らによる家型のスタディやリサーチ、住まいをめぐる100冊のライブラリーなどを通じて、住宅についての理解を深める場を提供します。また「イエノイエ」のあちこちに、食器や文房具など、家型をもつグッズが散りばめられるので、それらを発見することも楽しめるでしょう。

会期中「イエノイエ」では、様々なイベントも予定されています。出展作家をはじめとする、現在第一線で活躍する建築家たちによるトークイベントや、住宅論の名作を深く読み込む「ラウンドリーディング特別版」、あるいは、即日設計で住宅模型を作り批評しあう伝説のワークショップ「シューマイ」や子供向けのワークショップなど。どの企画においても、住宅デザインと家型を巡る、旬な論点と真摯な議論に出会えるきっかけとなるでしょう。

「イエノイエ」は、まさに新しい家型の建築の中で、さまざまな家型の可能性を体験し、考えることのできる場所として出現します。

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http://www.ienoie.net